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青春の一冊 闖入者 | 安倍公房

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/pdmagazine


安倍公房先生の短編集(↓)に収録されている「闖入者」。

水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

ひとり暮らしの男の家に、ある晩9人家族がやってくる。一家はいきなり「ここに住もう」と言って男の部屋に勝手に住み始める。男は当然抵抗するが「では多数決で決めよう」と一家はあらゆることを多数決で決め、男は自分の家にも関わらず「多数決で決まった通り」に一家の面倒を見て、自分の自由を失っていくというお話です。(ここ数年読んでないのですが、だいたい合ってるはず)

高校生のときはよく安倍公房作品を読んでいましたが、この話が一番印象的。理由は、めちゃめちゃ怖いからです。

闖入者を元にした戯曲「友達」のWikipediaを見ると、安倍公房先生は「闖入者」について以下のようにおっしゃっていたとあります。

『闖入者』の「闖入者」たちは多数原理(民主主義)を暴力の合理化に利用し、主人公はその多数神話に毒されている故にそれに逆らえず自己矛盾の罠におちいるという「受身の犠牲者」
友達 (戯曲) - Wikipedia

「闖入者」である一家や多数原理の暴力も受身の犠牲者になってしまうことも怖いのですが、何よりも主人公である男がだんだん「間違っているのは自分なのかもしれない」と感じ始める過程がすごくリアルで怖い。自分の家なのに「ここはあなたの家ではありません」と言われることで「そうなのかも?」と思えて来ちゃうだろうなーわかるなー、という怖さが強烈に印象に残っています。そして高校生の私は「自分の意見や感覚を信じるの大事~」と薄っぺらいことを考えたようながします。素朴!青春!

わたしにとって安倍公房作品はどれも「自分にも起こり得る」と思わせる感じがあるので、「知らない一家に家乗っ取られたらどうしよう」と半年に1度の周期で不安になる程度には、長く心の中にある作品です。同じように「脛からカイワレ大根生えてくるかもしれない」とも思って生きているし、安倍公房先生の作品はすごいですね。

(脛からカイワレ大根が生えちゃう話も最高です)

カンガルー・ノート (新潮文庫)

カンガルー・ノート (新潮文庫)